ピロリ菌感染と胃がん
胃酸という強い酸にさらされても生存できるピロリ菌は、感染すると胃の粘膜にすみつきます。衛生環境が改善した近年は感染率が減少していますが、先進国の中で日本の感染率はまだ高く、特に50代以上の感染率は70~80%にもなるとされています。
当院では感染率の高い50歳以上の方にピロリ菌感染の有無を調べる検査をおすすめしています。また50歳以下の方でも、胃もたれ、食欲不振、胸やけ、吐き気といった症状がある場合には、ピロリ菌によって引き起こされている可能性があるため、検査をおすすめしています。
ピロリ菌に感染しているから必ず胃がんになるというわけではありませんが、ピロリ菌に感染していない方の胃がん発生率は0%であるという報告もされています。人から人への感染も起こるため、次世代のピロリ菌感染を減らすためにも、検査と除菌治療は有効です。
ピロリ菌検査をおすすめしたい方
- 50歳以上
- 胃に痛みがある
- 空腹時に胃が痛む
- 食後に、胃が痛む
- 食欲が落ちてきた
- 胃もたれ、胸やけがある
- 慢性胃炎と診断された
- 健康診断で異常や再検査を指摘された
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の経験がある
- 胃がんや胃潰瘍を発症した家族がいる
慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発症しているケースでは、ピロリ菌に感染している確率がかなり高くなっています。こうした病気はきちんと治療を受けてもピロリ菌を除菌しないと再発リスクが上昇します。病気の治療だけでなく、ピロリ菌感染の有無を調べ、感染していた場合には除菌治療を受けてください。
なお、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合、ピロリ菌の検査と除菌治療は健康保険が適用されます。
ピロリ菌検査や除菌治療の健康保険適用範囲が広がりました
2013年より、ピロリ菌検査・除菌治療の保険適用範囲が広がり、これまでよりも幅広い方が保険診療で検査や除菌治療を受けられるようになっています。
これまでの条件
- 内視鏡検査または造影検査において、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断を受けた
- 胃MALTリンパ腫の確定診断を受けた
- 特発性血小板減少性紫斑病の確定診断を受けた
- 早期胃がんに対する内視鏡的治療後
追加された条件
- 内視鏡検査において胃炎の確定診断を受けた
実際の診療では、内視鏡検査で病気にかかっているかの診断を行い、病気の確定診断がなされた時点で、ピロリ菌に感染しているかどうかの検査を保険診療で受けられます。さらに、検査でピロリ菌感染が確認されたら、その後の除菌治療にも保険が適用されます。
※上記の条件に当てはまらない場合には保険診療が適用されませんが、自費診療で検査・除菌治療を受けることが可能です。お気軽にご相談ください。
除菌の流れ
感染している場合は、薬による除菌治療を行います。一次除菌治療から4週間以上空けて、再度ピロリ菌検査を行います。除菌が成功してれば、ここで治療は終了します。除菌が成功しなかった場合、二次除菌治療が受けられます。二次除菌治療も同様に4週間以上空けて、再度検査を行います。ピロリ菌除菌に成功するとさまざまな病気のリスクは下がりますがゼロにできるわけではありません。そこで、定期的な検査をおすすめしています。
除菌療法の副作用
薬の副作用
除菌治療時に服用する薬は、発熱、下痢、軟便、味覚障害、アレルギー反応などの副作用を起こす可能性があります。服用を続けても問題ないケースもありますが、すみやかに服用を中止する必要が生じる場合もありますので、何か異常がありましたらすぐにご連絡いただいています。
逆流性食道炎
ピロリ菌は胃液の分泌を低下される傾向があるため、除菌治療が成功すると胃液の分泌が一時的に活発化し、逆流性食道炎の症状が現れるケースがまれにあります。逆流性食道炎の症状には、胃もたれや胃のむかつき、みぞおちが焼けるように感じる、咳などがあります。こうした症状が現れたら、ご相談ください。