進行度別の症状
できるだけ早く受診しましょう
下肢静脈瘤は、進行の段階によって現れる症状が変わってきます。また、下肢静脈瘤が他の疾患の症状として表れている場合があり、中には緊急な治療が必要とされる重篤な疾患が原因になっているケースも存在します。たとえば足のむくみは他のさまざまな内臓疾患で現れている可能性があります。足のむくみや血管が浮き出てくるといった症状に気付いたら、できるだけ早く受診してください。
最適なタイミングで治療を受けるために
下肢静脈瘤は良性疾患ですから、できるだけ日常生活に支障が現れないタイミングを選んで治療を受けることが可能です。ただし、進行してしまうと治療が難しくなり、完治まで時間がかかってしまうようになりますので、早めに受診することをおすすめしています。
足のむくみ・だるさ・重さ
下肢静脈瘤の典型的な初期症状ですが、他の重大な疾患からこうした症状が現れる可能性もあります。そのため、必ず受診して他の疾患がないか確認しましょう。
足の細い血管が浮き出て見える
血管が皮膚から透けて見えるようになります。まだ瘤はできていない、軽度の下肢静脈瘤の症状です。細かい血管がクモの巣や網目のように見える場合もあります。
瘤のように太い血管が浮いて見える
蛇行したり、瘤のようになった血管が皮膚から浮き出てきます。この段階で色素沈着や皮膚炎が起こることもあり、見た目が気になって受診される方が多くなってきます。適切な治療で見た目や症状は改善できますので、お気軽にご相談ください。
色素沈着と皮膚炎
足首が黒や茶色っぽくなる、色素沈着が起こる、シミができる、湿疹やただれなどの皮膚炎を繰り返し、皮膚炎やケガなどが治りにくくなり、潰瘍ができるなどが起こります。潰瘍ができるまで進行すると治療は難しくなり、完治まで長い時間がかかりますし、皮膚の状態を完全に戻すことができなくなる可能性が高まります。
下肢静脈瘤のタイプ
静脈瘤ができる場所などによって、下肢静脈瘤はいくつかのタイプに分かれており、それぞれ治療法が異なります。大きく分けると、伏在型、側枝型、網目状・クモの巣状に分けられます。
伏在型
蛇行したり、瘤のようにボコボコと膨らむ静脈瘤で、主に太腿・ふくらはぎ・膝の裏などにできます。表在静脈本幹である大伏在静脈や小伏在静脈に発生するタイプです。
大伏在静脈瘤
大伏在静脈は、足首の内側から鼠径部(足の付け根)まで伸びて深部静脈に合流する静脈です。この大伏在静脈本幹とその主要な分枝に発生し、足の表在静脈では最も静脈瘤ができやすいとされています。下腿から大腿部内側、下腿の外側、大腿部の背側などに発生しやすい静脈瘤です。
小伏在静脈瘤
小伏在静脈は、アキレス腱の外側から伸びて膝の裏で深部静脈に合流する静脈です。小伏在静脈瘤はこの小伏在静脈にでき、足首の後ろや膝の後ろに発症します。大伏在静脈瘤に次いで発症率が多い下肢静脈瘤です。
側枝型静脈瘤
伏在静脈本幹から枝分かれした側枝の静脈が拡張して発症するタイプで、分枝静脈瘤とも呼ばれており、独立型も存在します。主に膝から下の部分に静脈瘤ができ、伏在静脈瘤よりやや細いという特徴を持っています。
網目状・クモの巣状
細い皮下静脈が細かく透けて見えるタイプです。皮膚の下から血管がボコボコ浮き出てくる症状はありません。直径2~3㎜の血管が透けて見える網目状静脈瘤、さらに細かい直径0.1~1㎜の真皮内静脈瘤であるクモの巣状静脈瘤があります。クモの巣状静脈瘤はさらに、毛細血管が拡張した赤紫のタイプ、細静脈が拡張した青白いタイプに分けられます。
手術を受けるタイミングについて
下肢静脈瘤は良性疾患です。静脈瘤という名前ですが、血栓によって脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性はありませんし、重症化して潰瘍が悪化しても足の切断に至ることはありません。ただし、下肢静脈瘤は、足のだるさが強く出て立ち仕事が続けられなくなることや、うっ滞性の皮膚炎が繰り返し起こる場合があります。また、見た目が気になって「スカートがはけない」「温泉に行けない」など日常生活に支障を及ぼすケースもよくあります。こうした場合には治療が必要になります。
適切な検査と治療により、下肢静脈瘤の症状は改善できます。下肢静脈瘤の診断を受けたら、日常生活に支障がないタイミングを見極めて手術を受けることで、生活の質を向上させることができます。症状が軽い段階で治療を受けることで治りも早くなりますし、生活への影響も最小限に抑えられます。進行すると皮膚炎や色素沈着などが起こりやすくなって治りにくくなります。足のだるさや血管が浮き出るなどの症状があったら、下肢静脈瘤を専門的に見ている医療機関を必ず受診するようにしてください。