下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤は静脈弁がうまく働かなくなる、あるいは壊れることで発症しますので、根本的な治療のためには手術が不可欠です。少しむくむ程度の軽度であれば、弾性ストッキングなどを使った保存療法も可能ですが、これはあくまでも進行を抑制して症状を和らげるためのものであり、治すことはできません。
手術ではこれまで弁の壊れた静脈を引き抜いてしまうストリッピング手術が行われていましたが、現在はレーザーを使った治療が主流になりつつあります。
レーザーを使った治療の場合、出血が少ないなど身体的な負担が少なく、再発率も低いことが大きなメリットとなっており、傷が小さくてすみ、局所麻酔と軽い全身麻酔だけで受けられるため麻酔リスクも低くなるという特徴があります。
血管内治療用半導体レーザー装置ELVeSレーザーによる最新の治療
当院では、健康保険が適用される最新のレーザー治療機器、血管内治療用半導体レーザー装置ELVeSレーザーを導入しています。厚生労働省から認可を受けた日本初の下肢静脈瘤血管内レーザー装置です。
治療には細いファイバー用い、静脈弁不全をともなう伏在静脈内に挿入して行います。伏在静脈内でレーザーを照射し、血管壁を損傷・収縮させて血管を閉塞させて血流を遮断します。術後はレーザーを照射した血管壁が退縮していき、血管自体が消失するため、静脈瘤の根本的な治療となります。
下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術に関しては、特定の基準を満たした施設が実施施設とされており、血管内レーザー焼灼術に関しても実施医としての認定制度があります。当院はこうした基準を満たした実施施設であり、当院で血管内レーザー焼灼術を行う医師は実施医として認定されている血管外科専門医であり、多数の下肢静脈瘤手術を経験してきていますので、安心して診療を受けていただけます。
ELVeSレーザー治療のメリット
- 数㎜の切開で手術できるため、術後の傷がほとんど目立たない
- 局所麻酔と軽い全身麻酔で、麻酔リスクを軽減
- 静脈の解剖学的閉塞率が90~100%と成功率が高い
- 再発率が低い
- 血管を引き抜かないため、身体への負担が少ない
- 出血が少ない
デメリットには、術後の一時的な痛みやつっぱり感、皮下出血などの可能性があげられますが、従来の方法に比べると痛みや出血リスクはかなり低くなっています。
ELVeSレーザー1470のご紹介
ELVeSレーザーは、下肢静脈瘤の治療に関して健康保険が適用される唯一のレーザー機器です。ELVeSレーザーには、980nmと1,470nmの2種類があります。980nmELVeSレーザーは、2011年4月に国内で初めて「下肢静脈瘤血管内治療レーザー」として医療機器の承認を取得し、下肢静脈瘤の標準治療となっています。
1,470nmELVeSレーザーは、2014年5月に後継最新機種として登場し、980nmELVeSレーザーに比べ手術後の痛みや皮下出血が大幅に軽減されています。
現在、1,470nmELVeSレーザーを保険診療で受けるためには、下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施施設として認定された医療機関で、同じく下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施医の認定を受けた医師による治療である必要があります。当院はこの基準を満たしております。
静脈麻酔について
下肢静脈瘤をレーザーで治療する場合、局所麻酔だけで行うクリニックもありますが、当院では局所麻酔に加えて軽い静脈麻酔も使います。局所麻酔だけで行う場合、麻酔量を多くする必要がありますし、手術中に緊張して血圧上昇や筋肉の収縮などが起こり、身体への余計な負担がかかります。静脈麻酔を併用することにより、軽くウトウトしている状態で手術を受けられるため、手術中の痛みがなく、手術後の痛みも軽減し、お身体への負担も軽減されます。
当院には麻酔科の診察も行っておりますので、お身体への負担を最小限に抑えて安全性を高めるために患者様ごとの最適なコントロールを行っています。
レーザー以外の治療方法
ストリッピング手術
弁の壊れた静脈を引き抜いてしまう手術です。鼠径部と膝を切開して血管の中に手術用のワイヤーを通し、血管をワイヤーに糸で結んでワイヤーごと血管を引き抜く方法です。伏在静脈瘤の治療として昔から行われてきた治療法であり、治療効果が高く、再発率が低いという特長を持っていますが、術後の痛みが強く、出血や神経障害などの合併症が起こる可能性があります。
高位結紮術
静脈瘤が発生しているより高い位置で血管を縛り、血液の逆流を防ぐ方法です。
血管エコーで弁不全を起こしている位置や分枝の状態を確認し、局所麻酔後に切開を行います。1~1.5cm程度の大きさの切開を数ヶ所に行う必要があり、そこから動脈を結んで離断します。現在は術後の消毒や抜糸が必要のない方法で手術が可能です。
高位結紮術は、単独では十分な治療効果が期待できないケースがほとんどですので、当院では硬化療法やストリッピング手術と併用することが多くなっています。皮膚切開部を最小限に抑えること、細い血管を見つける必要があることから、高い技術力や豊富な経験がないとできない治療法です。
硬化療法
静脈瘤に血管を固める硬化剤を注入し、弾性包帯で圧迫して血管を潰す治療法です。硬化剤は血管の内側をくっつける働きを持っており、注入されると血液が流れなくなった血管が徐々に退縮して組織に吸収され、消失します。
主に網目状やクモの巣状の静脈瘤への治療に用いられますが、他の手術後の遺残静脈瘤の治療に用いられる場合もあります。
注射だけですが、治療時間は10~15分程度かかります。また、1度だけでは十分な効果が得られないケースもあり、その場合には硬化療法を数回受ける必要がある場合もあります。切開がないため傷が残らず、身体への負担も少ないと言えます。麻酔もほとんどの場合は必要ありません。ただし再発率が高く、大きな静脈瘤には効果がありません。また、色素沈着やしこりなどが生じる可能性がありますが、これは時間の経過により消えていきます。
保存的療法について
下肢静脈瘤での保存療法は、進行を抑えるためのものです。症状がまだ軽い場合や妊娠してるなどすぐに手術を受けられない場合に行います。
薬物療法はなく、保存療法は弾性ストッキングなどによる圧迫療法のみです。
弾性ストッキングによる圧迫治療
伸縮性が高い医療用ストッキングを着用する治療法で、拡張した血管が圧迫されることで足に血液が溜まりにくくなります。これにより静脈の余分な血液が減少し、深部静脈への流れを促進します。こうして足全体の血流が改善し、むくみやだるさ、足がつるなどの症状を緩和させます。
フィッティングで症状に合ったものを選びましょう
弾性ストッキングは、逆流を起こしている静脈の部位に合わせたものを正しく使うことではじめて効果を発揮します。間違えたものや使い方では逆効果になる可能性もあります。そのため、当院では症状、体形、年齢、性別などにきめ細かく合わせ、太腿までのもの、膝下までのもの、圧力などを見極めて処方しています。
圧が強いため正しく着用するためにはコツがありますし、蒸し暑さ、皮膚との相性などにも配慮する必要があります。当院では、フィッティングの際に丁寧にお話をうかがいながら詳しいアドバイスをさしあげています。
各治療費用
保険適用 | 3割負担 | 1割負担 | |
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初診 | 約2,500円 | 約900円 | |
超音波検査 | 約2,500円 | 約900円 | |
超音波検査+術前検査 | 約7,000円 | 約2,500円 | |
レーザー治療 | 片足 | 約46,000円 | 約16,000円 |
両足 | 約86,000円 | 約29,000円 | |
後期高齢者自己負担限度額 | 57,600円 | 14,000円 | |
片足 | 片足 | 約6,000円 | 約2,500円 |
ストリッピング手術 | 片足 | 約40,000円 | 約13,000円 |
静脈瘤切除 | 約5,000円 | 約1,800円 |
保険適用外 | |
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弾性ストッキング | 3,780~5,724円(税込) |